知財部門の役割について

知財部門の役割は、所属する組織がすでに獲得した知的財産権のポートフォリオの質や量、組織の規模、事業内容、収益構造(ビジネスモデル)、取引先や競業他社との関係などにより、異なる。それに応じて、求められる内容、取り組むべき優先順位なども変わってくる。しかし、究極的に言えば、事業を支える知的財産権を取得・維持・管理すると共に、取得した知的財産権を活用することで販売促進につなげたり競合他社との関係を優位なものにして企業価値を高め、事業の発展に貢献することであると考えられる。

例えば、研究開発型企業の場合、経営部門・技術部門・営業部門といった各部門とのパイプ役となり、事業に貢献しうる知的財産権をいち早く権利化する仕組みを作ることが求められるかもしれない。フェーズが進み、すでにある程度の知的財産権のポートフォリオを構築していれば、知的財産権は、相互に技術力を補完し合う”win-win”の関係を築くための業務提携先を模索したり、資金調達の手段として利用したり、業界を横断して技術の標準化を進めたり、知的財産権をめぐる他社との攻防に活用したりする手段として用いることもできる。知財情報を活用すれば、業界内における知財ポジションや技術開発の動向や社会のニーズ等を的確に把握して技術開発への適切な投資を行う提言を行うことも可能になる。

事業の方向性を決定づけるこれらの重要な提言の多くが、部門を横断して情報を取得したり発信しうる立場にある知財部門を通じてなされることも少なくない。

とりわけ、新事業を創造するフェーズでは、知財戦略の立案が極めて重要である。特許庁は、2019年から企業の「経営」に資する知財戦略に関する事例集を継続的に発行している(※1)。新事業創造における知財戦略の実践へのアプローチおよび環境整備の具体的事例について紹介されている。誰でも無料でダウンロードできるが、製本された冊子も無料配布されている。知財組織の活性化を目指す知財部門にとって参考になる。

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※1 特許庁ウェブサイト 新事業創造に資する知財戦略事例集~「共創の知財戦略」実践に向けた取り組みと課題~について
https://www.jpo.go.jp/support/example/chizai_senryaku_2021.html

新事業創造に資する知財戦略事例集
https://www.jpo.go.jp/support/example/document/chizai_senryaku_2021/chizai_senryaku.pdf