ビッグデータの法的位置づけについて

いわゆる「ビッグデータ」は、我が国でどのように法的に保護されるのか。ここでいうビッグデータとは、厳密な定義でないかもしれないが、”他者との共有されること”を前提として収集された、経済的に価値あるデータをいう。例えば、地図データや製品ごとの売上データ、広範囲に設置したIoT機器から取得したデータが該当するかもしれない。

このようなデータは、上記の通り、”他者との共有”が前提として取得されたデータであるから、例えば顧客情報などのように「秘密管理」されていない個人情報などは含まないデータであり、営業秘密として保護されるものでないことは明らかである(※1)。また、特許権で保護するには、「発明」としての創作性が要求される(※2)。残念ながら、データの内容(コンテンツ)そのものは特許権では保護されない(※3)。では、著作権による保護はどうか。「編集著作物」として保護される余地がないわけではないが、恐らく著作物性を満たさないとして著作権でも保護されない可能性の方が高いように思われる(※4)。

しかし、ビッグデータは、潜在的な顧客に対して、より精度の高い情報を提供したり、AI開発において使用される(場合がある)「教師データ」として利用できるなど、一定の経済的価値を有する。従って、権限のない第三者が不正な方法で取得したり使用しりすることに対して一定の法的保護が与えられるべき社会的要請があると考えられる。そこで、平成30(2018)年に改正された不正競争防止法では、「限定提供データ」に係る「不正競争」として、その不正取得及び不正使用等に対して差止請求権や損害賠償請求権等が認められている(※5)。

限定提供データの保護は、それだけで完結する話ではなく、保護すべきビジネスの全体像を的確に把握したうえで、他に特許権や著作権、不正競争防止法における営業秘密又は「限定提供データ」として保護できる部分がないかどうかといった、総合的な判断が求められる。また、特許権や著作権等で保護可能は部分は適切に保護しつつ、保護されない部分については、営業秘密の保護と同様に、事前に取り交わす契約書が重要になる。この場合、個人情報保護法、独占禁止法、不正アクセス禁止法など、関連する法律にも留意する必要があると考えられる。

弁理士は、これらの相談業務等についても弁理士の名において(いわゆる専業ではなく標榜業務として)、これらの業務に関与できる(弁理士法第4条第3項)。また、いわゆる付記弁理士であれば、訴訟代理権が認められている特定不正競争に当たるので、裁判所における訴訟代理人として侵害訴訟事件に関与することもできる。現在(2020年12月)のところ、当事務所ではまだ関与実績はないが、機会があればぜひ関与してみたい。

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※1 そもそも、営業秘密として保護されるのであれば、従来の不正競争防止法の下でも保護が可能である。
※2 特許法第2条第1項には、「この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と規定されている。
※3-4 「データ構造(学習用データセット)」、「学習用プログラム」などであれば、特許権や著作権で保護される可能性はある。しかし、データの中身(コンテンツ)や学習パラメータそのものが特許法で保護されることはない。
※5 平成31年1月23日 経済産業省 「限定提供データに関する指針」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/guideline/h31pd.pdf