特許法における「手続」の意味について

特許法は一般法である民法の特別法として位置づけられ、特許に関する様々な「手続」について規定している。「手続」は辞書にものっている日本語であるが、特許法における「手続」とは、具体的には何を意味するだろうか。

実は、特許法第3条第2項には、「手続」について以下のように定義されている。

「特許出願、請求その他特許に関する手続(以下単に「手続」という。)」

つまり、特許法(政令や省令などを含む)において、単に「手続」という場合、「特許出願、請求その他特許に関する手続」を意味する。ここで、一般的な法律用語の解釈として、「○○その他△△」という場合、その他の前の語句(○○)が後の語句(△△)と対等並列の関係にある例示であることを意味する(※1)。すなわち、

・特許出願
・請求
が「その他特許に関する手続(以下単に「手続」という)」と対等並列の関係にある例示であると解される。ここで、請求とは、例えば、「出願審査請求」や「拒絶査定不服審判請求」や「閲覧請求」は、いずれも「請求」という手続の1つである。

例えば、特許法第8条(在外者の特許管理人)には、
「日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しないもの(以下「在外者」という。)は、政令で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であって日本国内に住所又は居所を有するもの(以下「特許管理人」という。)によらなければ、手続をし、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない。」と規定されている。

すなわち、在外者は、制令で定める場合を除き、「特許管理人」によらなければ、例えば特許出願や出願審査請求等の請求、その他「特許に関する手続」をいずれもすることができない、また、後段の「又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない」とは、在外者は、制令で定める場合を除き、「特許管理人」によらなければ、例えば行政庁がした処分すなわち拒絶審決や無効審決に対して審決取消請求訴訟を提起できないし、処分取消訴訟などの行政訴訟を提起できない、と解される。

また、第11条には、「手続をする者の委任による代理人の代理権」について、第12条には、「手続をする者の代理人が二人以上あるとき」について、特許法第13条には、「手続をする者がその手続をするのに適当でないと認めるとき」について、それぞれ規定している。これらの条文に登場する「手続」とは、いずれも特許法第3条第2項で定義された「特許出願、請求その他特許に関する手続」を略記したものと解される。

===
※1 これを「並列的例示」という。同様の解釈をとる条文として、「特許権その他特許に関する権利」(特許法第15条)、「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項」(第36条第7項)などがある。
これに対して、「○○その他のXXX」という表現がある。これを、「包括的例示」という。○○は例示でXXXが包括概念(上位概念)という意味である。例えば、「相続その他の一般承継」という表現は、相続は一般承継の1つであるが、相続以外の一般承継(例えば会社の吸収合併など)もあるので、相続<一般承継という関係となる。同様の解釈をとる条文として、例えば、特許法第19条「願書又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により特許庁に提出する書類その他の物件」(特許法第19条)、「契約、勤務規則その他の定めの条項」(特許法第35条第2項)などがある。最新の特許法(令和元年五月十七日公布(令和元年法律第三号)改正)で検索すると「その他の」は全部で63個あった。
このように、「その他」と「その他の」とでは、解釈が異なる。請求項の記載についても同様である。法律を学んだ方には基礎的な知識だと思うが、理工系の大学では習う機会がなく、当職も弁理士試験を受験するまで知らなかった。