シリーズ(連続)商標制度について

香港の商標制度にシリーズ(連続)商標制度というものがある。香港の商標法はわが国同様に「一商標一出願制度」を採用するが、「シリーズ商標」については例外として複数の商標を1出願に含めて出願することが可能である。連続商標とは、その本質的部分が互いに類似しており、商標の同一性に実質的な影響を及ぼさない識別性のない部分のみが相違している2以上4までの商標をいう※1。実務上、色違い商標を1つの商標として出願されるケースが多いようである。シリーズ商標制度は英国法の流れを汲む制度であり、英国のほか、インド、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド等の商標制度にも存在する。

ちなみに、わが国の商標制度は、旧法における連合商標制度が一商標一出願制度の例外として存在していたが、平成8年の法改正で廃止された。また、色違い類似商標については商標法70条に特則がある。解釈はやや専門的になるが、色違い類似商標の使用は専用権(商標法第25条)の範囲での使用となり、不使用取消審判における使用についても専用権の範囲での使用とみなされ、さらに、登録防護商標にも適用される。要するに、わが国では、「色彩のみからなる商標」を除いては、色違い類似商標を複数出願する必要はない、ということである。なお、平成26年改正法において、いわゆる非伝統的商標※2が保護対象として加わったことを受け、「色彩のみからなる登録商標」については適用除外(第4項)となっている。

 

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※1 「模倣対策マニュアル 香港編」(2014年3月、日本貿易振興機構)
https://www.globalipdb.inpit.go.jp/jpowp/wp-content/uploads/2014/09/4a5a4a20ac887173017494702c80a644.pdf

※2 商標法70条
第七十条 第二十五条、第二十九条、第三十条第二項、第三十一条第二項、第三十一条の二第一項、第三十四条第一項、第三十八条第三項若しくは第四項、第五十条、第五十二条の二第一項、第五十九条第一号、第六十四条、第七十三条又は第七十四条における「登録商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含むものとする。
2 第四条第一項第十二号又は第六十七条における「登録防護標章」には、その登録防護標章に類似する標章であつて、色彩を登録防護標章と同一にするものとすれば登録防護標章と同一の標章であると認められるものを含むものとする。
3 第三十七条第一号又は第五十一条第一項における「登録商標に類似する商標」には、その登録商標に類似する商標であつて、色彩を登録商標と同一にするものとすれば登録商標と同一の商標であると認められるものを含まないものとする。
4 前三項の規定は、色彩のみからなる登録商標については、適用しない。

※3 新たな保護対象 (平成26年改正商標法)
「動き商標」「ホログラム商標」「色彩のみからなる商標」「音商標」「位置商標」が新たに保護対象として加わった。