日本国への複数回の国内移行手続

2020.07.30 

PCT国際出願をわが国に国内移行すると、特許法第184条の3の規定により、「その国際出願日にされた特許出願」とみなされる。他方、PCT国際出願をわが国に移行する際に、「特許出願」ではなく、「その国際出願日にされた実用新案登録出願」とみなされるようにすることもできる(実用新案法第48条の3)。実務的には、国内移行手続のための提出する「国内書面」において、「出願の区分」の表示欄において、「特許」か「実用新案登録」かを表示することとなる。

では、1件のPCT出願を、出願区分:「特許」としてわが国の特許庁に国内書面を提出し、特許出願がわが国に係属した後、同じPCT出願を再度、出願区分:「実用新案登録」としてわが国の特許庁に国内書面を提出することは可能か。特に禁止規定がないから問題ないように思われるが、答えは「不可」である(※1)。特許法及び実用新案法における上記「みなし」規定によってわが国の国内出願とみなされる以上、積極的にこれを「認める」ための国内法令がなければならないと解されるからである。もちろん、先の国内書面の出願区分が「実用新案登録」であっても同様である。すなわち、わが国では、国内書面は1度しか提出することができない。

先に提出した国内書面によって特許出願が係属した後、実用新案登録を希望する場合、時期的要件等を具備すれば出願変更(実用新案法第10条)することができる。この場合、先の特許出願が取り下げられたものとみなされる。なお、特許出願を実用新案登録出願に変更する際の注意点として、基礎的要件(実6条の2)に違反しないようにすることである。すなわち、材料や方法などの請求項は削除しなければならない。また、もし特許出願を残したまま実用新案登録出願をも希望するのであれば、先の特許出願を分割してからその分割出願を実用新案登録出願に変更することが必要である。この場合、特許出願と実用新案登録出願は同日出願(出願日は国際出願日)となるため、請求項が同一にならないように注意しなければならない(特許法第39条第4項)。

国内移行の区分が「実用新案登録」であった場合、出願が係属中であれば同様に出願変更するか、又は分割出願をしてから分割出願を変更すればよい。外国語実用新案登録出願(実用新案法第48条の4)の場合、国内処理基準時(実48条の4第6項)が経過して数ヶ月経ってようやく方式審査が始まるので、早々に国内書面を提出していてもすぐに登録されることはないと考えられる。また、実用新案登録の場合、出願日から3年以内など、要件をみたせば、「実用新案登録に基づく特許出願」(特許法第46条の2)を行うことも可能である。

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※1 「特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の国内移行手続」 令和元年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト 84頁 Q1-2 https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2019_jitsumusha_txt/20t.pdf
Q1-2 「一の国際出願について、複数( 例えば、特許と実用新案等)の国内移行手続をすることはできますか。」
A  「一 の国際出願について、複数の国内移行手続をすることはできません。一の国際出願に対しては、一の国内書面しか提出できません。」