医薬品の特許データベースについて

現在利用できる医薬品の特許データベースは、以下の2つが有名であるので紹介する。

(1)MedsPaL※1
HIV、結核(TB)、マラリアのための特許データベース。国名・ブランド名・特許満了日・ライセンス情報などの情報を提供している。登録件数は70化合物以上であり、生物製剤を含む。
(2)Pat-InforMed※2
2018年9月に開設された医薬品のための特許データベース。WIPOと製薬企業の関連団体である国際製薬団体連合会(IFPMA )の共同事業により設立されたデーターベースであり、医薬品に関する14,000件超の特許情報が公開されている。なかでも、癌、C型肝炎、心疾患、HIV、糖尿病、呼吸器疾患を対象とする低分子医薬品等必須医薬品リスト(WHO Model List of Essential Medicines)のモデルリストに掲載される情報が充実している。MedsPalとは異なり、生物製剤は含まない。

ちなみに、医薬品の特許出願の分野では、現在、特に検索時の問題として、医薬品の有効成分の表記をめぐり国際一般名称(INN)※3を特許出願明細書に開示する義務を課するという、主に途上国側からの提案が、国際会議などで長年議論されている(※4)。先進国側の一貫した主張として、INNの開示義務を出願人に課すべきでないとしているが、私見としては、どの程度の強制力をもって開示義務を課すかということと、関連しているように思う。INNが付与されていない新薬などはそもそも開示できないなど、問題もある。少し意味合いは異なるが、記載要件に関連して、例えば出願明細書における単位の記載には、SI単位系での記載を義務づけているが、実際には遵守できていないケースも散見される現状がある。当事務所としても、出願時にSI単位を併記するなど、極力注意しているものの、外内案件などで記載できていないものが出願された場合でも、実際に拒絶理由も受けたことはないのが実情であり、運用レベルで現状どこまで実効性が担保されているかは、疑問がある。それでも、たとえ努力義務であっても、SI単位系の使用が推奨されることは、好ましいと思う。同様に、仮にINNの開示義務が課された場合、国内法令として、開示義務違反の効果がどのようなものかということを併せて議論すべきである。また、そもそも出願人に義務づけるのは努力義務に止め、日本国特許庁が後日、機械的に(自動的に)関連するINNを付与するといった運用を行うことを提案する方が建設的なのではないか、と思う。

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※1 MedsPaL https://www.medspal.org/

※2 Pat-InforMed https://www.wipo.int/patinformed/

※3 INN: Internatonal Nonprietary Names。国際一般名称。活性(有効)成分を特定する名称。例えば、解熱鎮痛剤の1つであるアセトアミノフェンの国際一般名称はパラセタモール(Paracetamol )である。
https://www.who.int/medicines/publications/druginformation/issues/WHO-DI_33-1_SchoolINN_1.pdf

※4 特許法常設委員会(SCP: Standing Committee on the Law of Patents)
毎年2回、ジュネーブ(スイス)で行われるWIPO国際会議場で開催されている国際会議。SCP29では、91か国の政府代表団、EU、及び複数の国際政府機関が参加する。日本政府代表団として毎年特許庁及びWIPO在ジュネーブ日本政府代表部より数名が出席し、日本弁理士会からもオブザーバーとして毎年2名が出席している。