依頼者とのヒアリング

新規な発明や新しいビジネスのアイデアなどについて依頼者から相談を受けるとき、当職が一番心がけているのは、最初の段階では決して否定的な意見を言わないことである。アイデアを着想するに至った経緯、課題の解決原理とそれを理解するために必要な前提知識の確認、具体的な実施方法やそれによる技術的利点と欠点及びビジネス上の効果、今後の発展・展望(販売戦略・企業連携・海外展開など)について話してもらうように努める。技術的な優位性、差別化するポイントは何か。収益を得るためのビジネスモデルとしてどのような想定をしているのか。例えば、どこで製造してどこで(誰に)販売するのか。実施主体は誰か。複雑な事案は絵に描いてもらい理解を深める。サービスであれば直接の受益者は誰か。サーバーはどこに置くのか。いろいろ話してもらううちに、次第にアイデアが整理されてくる。こちらはなるべく話の腰を折らないように注意しながら、分からない点についてあれこれ質問するだけである。相談者の方としても、こちらから受け取る様々な質問に答えることを通じて、アイデアが一層ブラッシュアップされてくるのである。一通り話し終え、こちらが十分に理解した後、当職の知る限りにおいて、技術的或いは法的見地から意見をいう。もっとも、特許出願や意匠、商標出願に関係する内容の場合は、調査・検討なしに結論はでないので、相応の日数をいただくことになる。

ちなみに、これは複数人で実施するブレインストーミング(アイデア検討会議)についても全く同様である。意見を出し合う段階では、決して否定的な意見を言ってはいけない。否定的な意見をいうと次の意見が出にくくなるからである。担当者(進行役)が議題(解決すべき問題点)を設定し、その解決策について意見を出し合ってもらう。それに対して、予想される結果を話し合い、或いは、もし○○したらといった極端な状況を敢えて想定してみる。いろいろ出たアイデアを、目的や用途、解決へのアプローチの種別等で分類したり、想定される様々な利点と欠点を整理したりする。弱点があればそれを長所に代える別の用途を考えるように促す。ブレインストーミングの場合は、アイデアが発散して収拾が付かなくなることもあるので、担当者は時間や議題を区切り、最後にまとめる作業が重要となる。アイデアの要点をまとめると共に分類・整理し、優先順位をつけ、また誰がそのアイデアを発言したのかを確認する。最後に全員の合意をとり、日付と出席者を記載したホワイトボードをスキャン(写真をとるでもよい)して印刷し、全員に配布し、各人に宿題(次回までにやること)を割り当てて解散となる。会議後はすみやかに議事録を作成し、好ましくは印刷した資料を配付資料と共に確定日付をとる。これを一定頻度で長期間実施すれば、社内の知財マインド向上にもつながり、成果が期待される。いずれにせよ、中長期的な目標を一番最初に立ててから始めることが肝要であると思う。