日本知的財産仲裁センターの活用

知的財産権侵害をめぐる争いは通常、当事者間で(通常は代理人を通じて)内容証明などのやりとりを経て、解決できない場合に裁判所に至るケースが多い。しかし、裁判は公開されるため、紛争の当事者となった事実は多くの人々の知るところとなる。さらに、訴訟手続を少しでも有利に進めるためには、知的財産訴訟に精通した専門性の高い代理人を選任する必要がある。一般的には、知的財産事件はよりも高度な事件という扱いになる場合が多く、代理人費用(弁護士費用等)も高額になりがちである。また、裁判は一審(地方裁判所)から二審(知的財産高等裁判所)に至るため、多くの時間が必要となる。裁判の途中で和解できれば早期決着もありうるが、いずれか一方が最後まで譲らなければ紛争の長期化は避けられず、当事者双方にとってビジネス面でも大きなデメリットとなることも多い。

要するに、訴訟事件の当事者となった事実が公開され、時間とコストを浪費する。この問題を一挙に解決する方法として、冒頭に掲げた「日本知的財産仲裁センター」の活用がある。同センターは知的財産権をめぐる紛争を解決するために設立された民間の仲裁機関であり、その主な役割は、調停と仲裁、及び必須判定などである。

仲裁機関を活用すると、裁判とは異なり「非公開」で紛争解決が可能であり、裁判と比べて低コストであり、かつ、裁判よりもはるかに迅速に処理される。

日本知的財産仲裁センターでは、申し立てがあると、事件管理者が1名割り当てられ、その後事件管理者によって経験豊富な弁護士と経験豊富な弁理士3名が仲裁人として選任される。仲裁機関を利用した紛争解決において唯一ともいえるハードルの1つが、双方が調停または仲裁に合意することである。なお、調停の結論に対して不服があれば改めて裁判所に訴えることが可能であるが、仲裁の結論に対しては裁判所に不服申立ができず、双方が必ず仲裁人の結論に従わなければならない強制力を持つ。

しかし、仲裁合意は紛争が発生した後で締結することが難しい場合もあるため、予め契約書で紛争解決手段として知的財産仲裁センターを用いることを合意した上で、仲裁の合意をしておくことが好ましい。

なお、知的財産権に関する国際的な紛争の場合は、知的所有権機関(WIPO)を利用することもできる。商事事件の場合は国際商事仲裁なども利用される。他にもいくつかの仲裁機関が存在する。

いずれにせよ、当事者間での和解が困難である場合、仲裁は裁判を回避する非常によい方法の1つであるといえる。

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日本知的財産仲裁センター ウエブサイト https://www.ip-adr.gr.jp