2013.07.24  ブログ 

立体商標制度は平成8年の商標法改正法で追加された制度である。有名な立体商標の登録事例としては、いわゆる「カーネルサンダース」(商標登録第4225637号)、株式会社不二家の「ペコちゃん」(商標登録第4157614号)、コカコーラのボトル(登録番号第5225619号)、懐中電灯のミニ・マグライト(第5094070号)などが有名であるが、他にも様々なものが登録されている。例えば、おもちゃで有名な「レゴ」のブロック(商標登録第4566490号)、防波堤などにある、いわゆる「テトラブロック」(商標登録第4639603号)、ワールドカップのトロフィー(商標登録第4460057号)、さらには出光興産株式会社のガソリンスタンドの店舗の形状(登録第5181517号)や株式会社ファミリーマートの店舗の形状(登録第5272518号)など(*1)、その他自動車の形状など商品自体の形状も多数登録されている。

立体商標は本来的にはあくまで「商標」であるべきであって商品の外観形状については意匠法で保護されることが予定されている。しかしながら、これまでの登録事例から見ると、実際には識別力のある商品自体或いは役務の提供場所自体の形状がそのまま保護されているという事例が多数存在していることに気づくであろう。

立体商標の登録は、制度開始直後は商標法第3条1項3号を非常に硬直的・厳格に解釈され、例外的に第3条2項に該当するもののみが救済される運用がなされてきたが、それが緩和され、商品の形状自体が登録されることになる一つの転機となった有名な判決がある。貝殻のチョコレート菓子で有名な「シーシェルバー」の事件(*2)である。平成20年6月30日、知財高裁第4部の田中信義裁判長は以下のように判示した。判決は非常に長いため部分的に引用する。なお、被告とは特許庁長官である。

第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(商標法3条1項3号該当性判断の誤り)について商標法3条1項3号の「その商品の・・・形状・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」の意義
(前略)

しかしながら,商品の形状は,取引者・需要者の視覚に直接訴えるものであり,需要者は,多くの場合,まず当該商品の形状を見て商品の選択・選別を開始することは経験則上明らかであるところ,商品の製造・販売業者においては,当該商品の機能等から生ずる制約の中で,美感等の向上を図ると同時に,その採用した形状を手掛かりとして当該商品の次回以降の購入等に結び付ける自他商品識別力を有するものとするべく商品形体に創意工夫を凝らしていることもまた周知のところであるから,一概に商品の形体であるがゆえに自他商品識別力がないと断ずることは相当とはいえないものであるこれをチョコレート菓子についてみると,前記のとおり,チョコレート菓子の選別においては,多くの場合,第一次的には味が最も重要な要素であるといえるが,同時にその嗜好品としての特質からチョコレート菓子自体の形体も外形からチョコレート菓子の識別を可能ならしめるものとして取引者・需要者の注目を引くものと見ることができるのであり,このことはチョコレート菓子の形体に板状タイプ,立体形状タイプ,立体装飾タイプなどがあり,各製造業者が様々な立体模様等を採用して独自色を創出しようとしていることからも容易に窺うことができるところであり,ここにおいてはチョコレート菓子の外形,すなわち形体が,美感等の向上という第一次的要求に加え,再度の需要喚起を図るための自他商品識別力の付与の観点をも併せ持っているものと容易に推認することができるのである。このように見てくると,嗜好品であるチョコレート菓子の需要者は,自己が購入したチョコレート菓子の味とその形体が他の同種商品と識別可能な程度に特徴的であればその特徴的形体を一つの手掛かりにし,次回以降の購入時における商品選択の基準とすることができるし,現にそのようにしているものと推認することができるのであるから,その立体形状が「選択し得る形状の一つと理解される限り識別力はない」とする被告の主張は,取引の実情を捨象する過度に抽象化した議論であり,にわかに採用し難いところである。(中略)

以上によれば,本願商標が商標法3条1項3号所定の商標に該当するとは認め難いことに帰するから,審決は,同規定の解釈,適用を誤ったものであり,取消事由1は理由があるものというべきである。」

「商標登録更新申請制度」のおかげで、商標権は10年間の存続期間を経過した後も、満了前までに適切な更新申請手続をすることでさらに10年間、しかも何度でも更新することができる。すなわち10年ごとに更新し続けるかぎり、永久権とすることができる。他の同種商品と識別可能な程度に特徴的であり識別力を有するか、又は長年の信用により、商品の形状そのものが需要者にとって識別力を有するに至れば、商標登録の要件を満たすという点で、立体商標出願を意匠出願と共に検討すべきである。

弊所では、実用新案登録出願の依頼を受けた場合、特にその外観形状に特徴がある場合には、これまでは意匠出願や特許出願(、又はその両方)として出願することを合わせて検討するようにしてきたが、最近では、これに加えて、立体商標出願を検討に加えるようにしている。事案に応じてケース・バイ・ケースであるが、「永久権」を取得しうるという魅力は非常に大きいといえるであろう。

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*1 特許庁ウェブサイト 「立体商標の登録事例(参考資料1)」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/t_mark28/sankou1.pdf

*2 平成19年行ケ第10293号
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20080701150044.pdf

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