Are human genes patentable? (人間の遺伝子は特許可能か?)

2013.06.14 

米国最高裁で人のDNA配列の特許性(発明成立性)が争われた。判決(Association for Molecular Pathology v. Myriad Genetics, Inc.)によれば、昨日(2013年6月13日)、裁判官の全員一致で人のDNA(human DNA sequences)は発明成立性を満たさないとして、特許による保護を受けることができない、他方、cDNA(相補的DNA)(注1)については、発明成立性を満たし、特許による保護対象となる、との結論を下した。

発明適格性(eligiblity)において、DNAとcDNAとで違いある理由は、要するに、DNAが人間が本来的に備えているものであり何ら創作されたものでなく単なる「発見」にすぎないのに対して、cDNAはを得るためは人間が人為的に作成しなければならないため、と理解される。名前が似ているだけで本質的に異なるというべきであろう。

It is undisputed that Myriad did not create or alter any of the genetic information encoded in the BRCA1 or BRCA2 genes …. Myriad’s principal contribution was uncovering the precise location and genetic sequence of the BRCA1 and BRCA2 genes within chromosomes 17 and 13.”

もともと米国には、かの有名な”太陽の下、人間によって作られた全て物”が特許されるべきという考え方が古くからある(注2)。人間が作り出したものでなければ「発明」としての保護適格がない。

ちなみに、我が国の特許法では、「発明の成立性」は、特許法第29条1項柱書に規定されており、審査基準(注3)には人体の塩基配列それ自体は単なる発見であって何ら創作性を有するものではなく、単なる「発見」であるから、我が国の特許法上の「発明」(特許法第2条第1項)に該当せず、特許による保護を受けることができない旨規定されている。他方、天然物から人為的に単離したたんぱく質などは保護対象となりうる。cDNAは人工的に合成しなければならないため我が国では特許法上の発明に該当すると考えられる。

従って、上記最高裁判決において、DNA配列が発明成立要件を具備しないこと、他方、cDNAは発明成立要件を具備しうることは、いずれも特許法第2条1項に規定する「特許法上の発明」に関する我が国の特許庁の解釈と軌を一にする結論といえるであろう。

==
*注1
【cDNA(complementary DNA)】
mRNAと相補的な塩基配列をもつ一本鎖DNA。mRNAなどを鋳型として逆転写酵素を用いて合成する。
http://www.weblio.jp/content/cDNA より抜粋

*注2  Diamond v. Chakrabarty, 447 U.S. 303 (1980) 米国最高裁
“Congress had intended patentable subject matter to “include anything under the sun that is made by man
ちなみに、現在はソフトウエア関連発明・ビジネス関連発明における発明成立性に関して一部修正が加えられており、創作性があっても保護適格がない場合がある。

*注3
特許・実用新案審査基準(特許法第29条1項柱書)より抜粋
「1.1 「発明」に該当しないものの類型
以下の類型のものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない。
(1)自然法則自体
「発明」は、自然法則を利用したものでなければならないから、エネルギー保存の法則、万有引力の法則などの自然法則自体は、「発明」に該当しない。(2)単なる発見であって創作でないもの
「発明」の要件の一つである創作は、作り出すことであるから、発明者が意識して何らの技術的思想を案出していない天然物(例:鉱石)、自然現象等の単なる発見は「発明」に該当しない。
しかし、天然物から人為的に単離した化学物質、微生物などは、創作したものであり、「発明」に該当する。
(以下略)」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/tukujitu_kijun/part2chap1.html
(特許庁ウエブサイト 特許・実用新案 審査基準より)