米国拒絶理由の対応(1)

先日、米国特許庁より許可通知(NOA; Notice of Allowance)を受け取った。パリ優先権を主張して米国に出願したものであり、最初に受けた拒絶理由の時から、最も広いジェネリッククレームの請求項(クレーム1)のみが拒絶され、他のサブクレームは全て許可可能(Allowable)が通知されていた。内容的に構成の相違が容易に主張できそうな引用文献であったため、知財担当者と相談の上、手続補正書(Claim Amendments)と意見書(Remarks)を提出するように現地代理人に指示した。ところが、数ヶ月後、新たな引用文献が追加され、再度拒絶理由が通知された。2度目の拒絶理由は構成上の差異が極めて小さいもので、内容的にみて、今度の拒絶理由は非常に厳しいものと直感した。

小職としては、すでに他の全てのサブクレームが許可され、請求項1さえ削除すれば残りは全て特許されるので、少し検討しただけで殆どあきらめかけていたのだが、発明者及び知財担当者のの強い希望によって、もう一度だけ、請求項1の特許成立に向けて対応することとなった。

なかなか対応策が決まらず、応答期限ぎりぎりまで議論しつくして出した結論は、日本の特許実務で言うところの「実験成績証明書」のようなものを提出することであった。わずかな相違点を強調するために1箇所だけ軽微な補正を行ったが、決め手となったのはクレームの作用効果を説明すると共に引用文献との相違を明らかにするための比較実験に関する資料であった。

外国の出願案件でこのような経験は初めてだった。発明者及び知財担当者の協力なくしては決して得られなかった成果であり、今回とても良い経験をさせてもらったと思う。代理人は文字通り出願人に代わって手続をする者にすぎず、強い権利は出願人の協力無くしては決して得られないということを、改めて認識させられた。