特許権の持分移転登録

特許権は財産権の1つであり、権利を維持するか否かは特許権者にとって極めて重大である。特に、権利が共有に係る場合、共有者間で協議のうえ決定されるべき重要事項であるといえる。共有者全員が権利の維持を望まないときは、特許料(特許維持年金)を納付しないことで、特許権は消滅するが、共有者の一部のみが権利の維持を望まないときは、その者に権利の持分を放棄してもらうことにより、他の共有者の持分が増えた状態で権利は維持される。この場合の手続としては、権利を放棄する特許権者(登録義務者)による捺印を含む「持分放棄証書」を添付して「(持分放棄による)特許権持分移転登録申請書」を共有者全員で特許庁に提出する(注1)。一方、持分放棄ではなく、「持分譲渡」することもできる。両者は移転の原因が異なるが、特許権の持分の一部又は全部が移転されるという点で法的効果は同じである。特許権の持分移転の手続に際しては、登録免許税法の規定に従い登録免許税(15,000円)を支払う。この登録免許税の納付は、移転登録申請書に特許印紙ではなく「収入印紙」を貼付することが必要である。ちなみに、譲渡対価が5千万円でも1億円でも、1件あたりの登録免許税の額は変わらない。残存年数なども関係がない。すなわち、権利の価値(価額)とは無関係である。商標権の場合、登録免許税の額は1件あたり30,000円である。

「移転登録申請書」は原則として共有者全員で提出することが必要であるが、「単独申請承諾書」を提出することで登録権利者(権利を譲り受ける特許権者)のみによる単独申請も可能である(注2)。この場合、「持分譲渡(放棄)証書」と「単独申請承諾書」を1通にまとめた「単独申請承諾付譲渡(放棄)証書」を用意して手続を簡素化することもできる。なお、登録権利者が複数いる場合でも「単独申請承諾書」という表現のままでよい。

移転登録手続は、登録原簿の内容を変更することになる重大な手続であるため、書類の作成には細心の注意を払い、不備なくスムーズにできることが好ましい。表記上の細かな点で方式上の不備を指摘される場合も珍しくない。本人手続もできなくはないが、多少費用がかかっても、信頼できる代理人(弁理士)に依頼することは意味があると思う。

注1)持分放棄による持分移転登録申請書
 特許庁ウェブサイト  https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/iten/tetsuzuki_06.html
注2)移転登録手続の単独申請について

特許庁ウェブサイト https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/iten/sonota/tandoku.html