特許出願の意義

2020.08.03 

特許出願をする意義は、何か。出願人にとっての第1の意義は、独占排他権といわれる特許権を取得することで、競合する市場において技術的優位性を訴求できる点であろう。競合他社による技術の模倣を抑えつつ、市場において価格決定権を長期間にわたって維持できるかもしれない。継続的な特許出願により、特許ポートフォリオを形成し、市場への参入障壁を築くことができるであろう。スタートアップ企業であれば、好条件で大企業に売却(EXIT)できるかもしれない。同業他社が回避できない優れた技術であれば、他社から継続的なライセンス収入が得られるかもしれない。開発の成果物である自社技術を特許によって適切に保護している経営姿勢は、銀行やベンチャーキャピタルからの高い評価につながり、結果、融資を得やすくなるかもしれない。

では、特許出願したが、出願審査請求しなかった場合はどうか。出願は、無駄だったのか。そうではないと思う。出願すること自体にも、大きな意味がある。特許出願すれば出願日から1年6月経過後に出願公開される。「御社の特許出願件数は?」と聞かれて、出願審査請求したかどうかは、考慮されない。出願審査未請求として取下擬制された特許出願も、立派に特許出願件数にカウントされる。出願件数は、例えば、会社の技術力を評価する際の重要な指標の1つである。ある技術的課題に対して、解決手段となる技術に複数の候補がある場合、最終的に1つに絞り込む前に、考え得る全ての技術について特許出願しておくことは、珍しくない。出願後、本命から外れた特許出願は、出願審査請求されることなく、「みなし取下げ」されるであろう。

また、出願審査請求したか否かにかかわらず、公開された特許出願は公知文献として利用され、また、「後願排除効」が得られる。すなわち、他社の権利化を阻止するという重要な意味がある。

会社から、技術部門に対して、開発の成果物は速やかに特許出願するようにと指示されていれば、発明者にとってはやはり「特許出願が無事完了する」ということ自体に、大きな意味があると思う。或いは、将来、転職を考えるとき、履歴書に特許出願件数を記載でき、それが評価されるかもしれない。

もちろん、せっかく特許出願するならば、権利化したいと願うであろう。権利化できる可能性を高める方法はいくつもある。権利化された特許を数多く保有していることは重要である。しかし、万一権利化に至らなかったとしても、特許出願したこと自体に、非常に大きな意味があると思う。

これが、当職が考える「特許出願の意義」である。

逆に、特許出願のデメリットは何か。これは、出願=公開という点を考えれば自ずから明らかであろう。技術を公開することである程度会社の技術開発動向を察知されたり、重要技術を盗まれたりするかもしれないという点である。出願人(会社等)の立場とすれば、特許出願にかかるコスト、発明者への対価などを事業の開始前に負担しなければならない。これを、先行投資と考えれば、費用負担はデメリットと映るかもしれない。

従って、特許出願に際して重要なことは、メリットとデメリットを考え、適切な時期に適切な範囲で保護することを繰り返すということに尽きるであろう。会社としては、必要な特許出願のための費用を確保しつつ、顧問弁理士に相談して、出願戦略を構築することがなによりも重要である。