有効成分について特許を受けている医薬品の発明について特許を受け、存続期間が延長されている場合に、有効成分は同じだが薬学的に許容可能な「塩」の部分のみを置換した医薬品(具体的には、被告製品は「コハク酸」を「フマル酸」に変更しており、明細書にも記載されていた※。)を製造・販売する行為は、韓国特許権の侵害を構成するであろうか。

韓国特許法(旧特許法)第95条では、「延長登録の理由となった許可等の対象物に関するその特許発明の実施以外の行為には及ばない」と規定しているため、原審では、塩変更医薬品の実施は、薬事法に従って許可を受けた医薬品と異なるため、特許権の効力が及ばない、との判決がでていた(特許法院2017年6月30日、2016ナ1929判決)。

2019年1月17日、この問題について争われた判決がわが国の最高裁にあたる韓国大法院でなされた。大法院では原審の判決が覆され、特許発明の技術的範囲に属するとして侵害を認めた(2017ダ245798韓国大法院)。許可品目を基準とするのではなくあくまで特許請求の範囲を基準として判断すべきとの判断は、特許権者(医薬品メーカー)にとって有利な判断といえ、いわゆるジェネリック医薬品メーカーは戦略の見直しを迫られることになるであろうと伝えられているようである。

ちなみに、わが国における特許法第68条の2は、韓国旧特許法第95条同様に、「処分の対象となった物」と記載されているので、同様の疑義が生じる可能性があると考えられる。存続期間の延長制度をどのように位置づけるかで考え方は変わると思うが、薬事法など他の法律の規定により実施できない期間を回復するという存続期間の延長制度の趣旨に鑑みて特許権者の権利を厚く保護する立場を取るのであれば、薬理効果が同じである「塩変更物質」は、わが国においても、延長された特許権の特許発明の技術的範囲に属すると解すべきであり、その場合は、本来であれば立法的解決が図られてもよいのではないか。

※ 両者は同一のクラス(Class 1)に分類される典型的な薬学的塩である。

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