特許庁面接審査について

特許出願の審査は「書面審査」が原則であり、これを「書面主義」という。書面主義の原則は特許法第36条や特許法施行規則第1条に記載されている。

しかし、複雑な発明を書面だけで特許庁の審査官に理解してもらうことが難しい場合もあり、日本の特許実務においては「面接審査」が認められている。

日本の面接審査は「対面審査」が他国と比べて一般的である。欧州特許庁などの一部の例外はあるが、諸外国の面接審査は代理人が直接特許庁に行く機会はそれほど多くない。電話やFAX、国によってはE-mailが用いられる。しかし、面接審査の真価を発揮するのは、「対面審査」であると思う。 TV会議もあるが、やはり現在のシステムを前提とする限り、「対面審査」の方がよい。

小職が初めて面接審査に行ったのは、1999年(前職への入社2年目の頃)だった。14年以上たった今でも出願番号を記憶しているほど強く印象に残っている。発明者と新入社員だった知財担当者である小職と小職の上司と、首都圏の知財部門の社内弁理士1人と、合計4人で初めて面接審査を行った。面接後、首都圏のオフィスから審査官にFAXで補正案を送ったことを覚えている。拒絶理由を覆すことは不可能に思われた非常に困難な案件だったが、無我夢中で審査官に説明した。付き添いの上司は後ろでだまって見守っていてくれた。上司が付いてきてくれたのはこれが最初で最後だったように思う。

関係者の間での事前打合せ・発明者の説明・そして何より付き添ってくれた弁理士の見事な説明が奏功し、その後のやりとりを経て、自分が担当した案件で生まれて初めて特許査定となった。このときは首尾よくうまくいったが当時は面接審査ガイドラインも整備されていなかった。面接審査を断られることや、審査官の対応に苦慮するケースもしばしばあったが、現在は比較的充実した面接審査が行われている。

小職の場合、面接審査の基本的な流れは、以下のとおりである。審査官に電話で面接の意向を伝えて日程調整を行った後、FAXで面接日時、面接の趣旨及び登庁者の氏名(ふりがな)を記載した書面を送付する。

面接審査当日は弁理士会か特許庁若しくは弊所東京オフィスで打合せを行う。発明者に同席してもらえる場合は最初に発明の背景や発明のポイントなどを簡単に説明していただく。次に、クレーム記載の発明と引用文献記載発明との違いを丁寧に説明する。補正の用意がある場合は補正案も提示して、補正後の発明が現在の拒絶理由を解消しているとの心証が得られるかどうかを確認する。審査官の心証は意見書や手続補正書に反映させるように努める。面接審査を行えば、書面だけのやりとりと比べて無駄な拒絶理由を回避し、効率よい特許を取得できることが期待される。従って、弊所では重要な案件については極力面接審査を活用することを勧めている。

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*特許法施行規則
(書面による手続等)
第一条 特許出願、請求その他の特許に関する手続(以下単に「手続」という。)は、法令に別段の定めがある場合を除き、書面でしなければならない。
 書面は、法令に別段の定めがある場合を除き、一件ごとに作成しなければならない。
 書面には、提出者の氏名又は名称、住所又は居所及び法人にあつては代表者の氏名を記載し、印を押さなければならない。

*面接審査ガイドライン(特許庁ウエブサイト)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/mensetu_guide_index.htm