なぜ源泉税を控除して請求するのか

2020.08.11 

弁理士(個人)から受け取る請求書で源泉税が控除されているのは何故だろうか。なぜ、弁理士は、プロフィールを公開しているのか。答えがあっているか分からないが、ちょっと考えてみた。

わが国では、訴訟や特許出願や確定申告などの税務処理といった司法或いは行政に対する手続の殆どは、本人が行うことができる。にもかかわらず、わざわざ料金を支払って、弁護士や弁理士や税理士といった職業代理人(いわゆる士業)に依頼するのは何故か。おそらく、高度な専門知識を要する業務は専門家に任せたい、或いは、自分(自社)でやることも不可能ではないが、やり方を調べるのに途方もなく時間がかかるので、時間を買うという意味があるかもしれない。いずれにせよ、これらの職業代理人は、本人に変わって法律行為を代理する委任による代理人(民法第643条)ということになる。

ところで、映画などで、「弁護士を雇った」(※1)という表現が使われることがある。雇ったといっても、本当にその会社の社員として採用したということではない。社外の弁護士に依頼したという意味である。しかし、その案件に対してはあたかも雇用関係があるのと同じような(類似の)関係性になると解釈することもできる。そうすると、弁護士報酬は、代理人弁護士から依頼者に送付される請求書という形をとりつつも、実質は彼らに対する給料ということになる。給料であるということは、所得税(源泉所得税=源泉税)を徴収して税務署に納付しなければならない(※2)。社員であれば、毎月の月額報酬(給与)から源泉税を控除して決められた期限までに税務署に納付しなければならないが、それと同様に、弁護士報酬や弁理士報酬から控除された源泉税は、社員の給与から控除した源泉税を支払うのと一緒に納付する、ということになるのだと思う。社員を雇用していない個人は、もともと源泉徴収義務者ではないから、源泉税は控除しない。但し、特許業務法人のような「士業法人」に業務を依頼した場合、相手は弁理士個人ではなく、「法人格」を有するので、依頼者側が法人格を有する組織であれば、法人同士の契約ということになり、源泉税を控除する必要はない。特許業務法人が法人税を納付するからである。

弁護士や弁理士を「雇う」からには、スキルのある社員を求めて中途採用するときと同じように、依頼する業務を遂行する十分な能力があるかどうか、とか、信頼できる人物か、といったことを調べる必要がある。だからこそ、事件を受任(採用)するために、弁理士の多くは学歴や職歴及び専門技能といった履歴書や職務経歴書に記載するようなプロフィールを自身のウェブサイトなどで可能な限り開示しているのではないだろうか。もちろん、これらは個人情報なので開示の義務は一切ないが、当職を含め、多くの職業代理人は、例えばLinkedin(R)やGoogle(R)マイビジネスなど主にビジネスに特化した外部のSNSにプロフィールをやネットワーク(つながり情報)などを登録・公開しているのもそのためと考えられる。ちなみに、Linkedin(R)は転職サイトとしても有名であり、プロフィールを検索して求める人材を採用することができるようなサイトである。もちろん、SNSではなく、信頼できる人からの紹介を受けることができれば、より業務の受任に至る可能性が高くなる。

スキル人材の中途採用であれば、多くの場合、履歴書や職務経歴書に目を通したあと、「採用面接」を行う。弁護士や弁理士を雇うかどうか判断するために、採用面接ならぬ「最初の相談(ファースト・コンタクト)」で、実際に業務を依頼するかどうかを判断するのではないか。この点、著名な特許事務所であれば、所員の詳細なプロフィールを開示していないことも多い。これはその特許事務所自体が社会的に十分信頼されており、現状でも十分に業務を受任できているからともいえる。

当職も、開業当初は、発明相談会などで相談員を担当しても、そこから新規業務の受任に至ることは滅多になかった。しかし、徐々にではあるが、経験を積み、対応できる業務が広がって提供できる情報量が増えたことで、相談から受任に至ることも珍しくなくなってきた。これは、人事面接で不採用を繰り返していたが採用される場合が増えたとみることができるかもしれない。

また、自分で対応できることとそうでないことの区別もすぐに付き、必要であれば、よりふさわしい専門家を紹介することもできるようになった。逆に、当職自身も友人・知人や顧客等を通じて非常に多くの紹介を受けることができるようになった。場合によっては、案件ベースでチーム・アップし、連携して業務に当たることができるようになった。特に、外国から受注する業務の大半は、国際会議等で直接交流した人か、知人からの紹介を受けて受任するものが少なくない。

===
※1 英語ではそのまま”hire”(雇う)を使う。なお、わが国では、弁護士と弁理士とは独立した国家資格であるが、海外ではわが国の弁理士と業務範囲が重複する職業が、「特許弁護士(Patent Attorney)」という場合も珍しくない。例えば、「Googleマイiビジネス」の職業欄に「弁理士」という選択肢はなく、選択できるのは「弁護士(特許)」のみである。これを選択すると商標業務はやっていないという誤解を与えるため気が進まないが、最も近いということで一応これを選択している。
※2 源泉税は現在10%及び復興税(復興特別税)が2.1%かかるはずである。当事務所は2015年に個人事業から法人成りしたが法人化前は源泉税及び復興税を控除して請求書を送付していた。個人事業の場合、各種税金を計算し、還付があれば後日還付金を受け取る。