均等論を認める根拠

2013.06.27 

H10.02.24 第三小法廷・判決 平成6(オ)1083 特許権侵害事件(無限摺動用ボールスプライン軸受事件)は、特許発明の技術的範囲の解釈について、以下のように判示した。

「特許権侵害訴訟において、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(以下「対象製品等」という。)が特許発明の技術的範囲に属するかどうかを判断するに当たっては、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の技術的範囲を確定しなければならず(特許法七〇条一項参照)」

として、特許請求の範囲の記載に基くことが原則であることを明示しつつ、特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、一定の要件を具備する場合には、特許発明の技術的範囲に属する、と結論付けた。

最高裁が説示した、「均等論を認める根拠」は、以下のとおりである。

均等論を認める根拠

(一)特許出願の際に将来のあらゆる侵害態様を予想して明細書の特許請求の範囲を記載することは極めて困難であり、
相手方において特許請求の範囲に記載された構成の一部を特許出願後に明らかとなった物質・技術等に置き換えることによって、特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば、社会一般の発明への意欲を減殺することとなり、
発明の保護、奨励を通じて産業の発達に寄与するという特許法の目的に反するばかりでなく、社会正義に反し、衡平の理念にもとる結果となるのであって、
(二)このような点を考慮すると、特許発明の実質的価値は第三者が特許請求の範囲に記載された構成からこれと実質的に同一なものとして容易に想到することのできる技術に及び
第三者はこれを予期すべきものと解するのが相当であり、

(三)他方、特許発明の特許出願時において公知であった技術及び当業者がこれから右出願時に容易に推考することができた技術については、そもそも何人も特許を受けることができなかったはずのものであるから(特許法二九条参照)、特許発明の技術的範囲に属するものということができず、
(四)また、特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されないからである。

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最高裁判所ウエブサイト
H10.02.24 第三小法廷・判決 平成6(オ)1083 特許権侵害事件(無限摺動用ボールスプライン軸受事件)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121158050617.pdf