実務を伴うコンサルティング

2010.02.10 

日本弁理士会に「知財コンサルティング委員会」という委員会があり、先日、そこで当事務所の知財コンサルティングの事例紹介をする機会があった。

特許事務所は基本的に依頼者に代わり特許庁や裁判所に対する手続を代理する事務を中心業務とするが、最近は出願件数の激減、弁理士急増等、厳しい社会環境を背景に弁理士も出願等の代理だけでなくコンサルティング業務など、新規事業に取り組み業務を多角化することでそれぞれの特許事務所が付加価値を高めることが産業界からの要請であるという考え方が広がっている。

しかし、一口にコンサルティングといっても、明確な定義はない。当事務所も平成14(2002)年の設立後間もない時期から、「発明発掘から権利活用まで一貫した知的創造サイクルの構築支援」をモットーに知財コンサルティングを掲げて業務を進めているが、そのような考えに至った経緯というものを改めて考えたことはなかった。ごく自然に、そのようにしてきたからだ。従って、あらためて知財コンサルティングの定義などというと非常に難しいものに思えるし、当職にとってはコンサルティング自体を研究対象とすることにもあまり強い興味を感じない。

当事務所が目指す知財コンサルティングとは、基本的には特許庁や裁判所に対する手続(実務)とは別に、リスクと可能性の両方を示しながら現在起こっている知財に関する諸問題に対する解決策について種々の選択肢を示すことである。そこには、今後の見通しや知財戦略などの個別具体的な提言などが含まれる。中でも、企業の知財部を対象とする知財コンサルティング業務に力を入れている。これは、当職のバックグラウンドとして、企業の知財部で得た経験を活かす形で業務を進めているからに他ならない。

この種のコンサルティングは実務(対特許庁或いは対裁判所への手続など)に直結するものとそうでないものとがあるが、当事務所では、いずれの場合にも、コンサルティングと実務とは、全く別のものという立場を採っている。すなわち、所見を示したからといって必ずしもその後の手続についても当事務所が受任するとは限らず、当事務所の所見をもとに実務は別の事務所に頼んでもよいし、自社で手続してもよい。もちろん、所見に対してはその後の手続を受任するか否かによらず事前に提示した計算方法による対価をいただくことを了承していただいている。

特許や商標などの知財紛争が生じた場合、或いは、出願、審判、訴訟などの手続を代理人に依頼した後で、同一案件でその代理人を解任し、別の代理人に依頼することはよほどのことがない限り、滅多にない。そのため、案件が重要なものであればあるほど、特許事務所や法律事務所を選択するためには、手続を依頼する事務所を決める前に、複数の事務所に事案を説明した上で、それぞれの事務所に今後の方針、戦略などについて、事前に見解を求めるやり方がよい。この場合、実際の手続の費用とは別に、戦略の立案等の部分で費用が発生するが、複数の事務所でこれを行うことで最終的にどの事務所を選ぶかについての判断材料になるからである。